DX(デジタルトランスフォーメーション)とIT化は、混同されがちですが、その目的とスコープに大きな違いがあります。
端的に言えば、IT化は「手段」であり、DXは「目的」です。
IT化とは業務の効率化・改善
IT化とは、アナログな作業をデジタル技術に置き換えることで、既存の業務プロセスを効率化することです。
具体的には
- 紙の書類を電子化して管理する
- 手作業で行っていたデータ入力をシステムに移行する
- 社内での連絡手段としてチャットツールを導入する
- 勤怠管理をタイムカードからシステムに切り替える
IT化の主な目的は、コスト削減や生産性の向上にあります。
特定の部署や業務の課題を解決するための取り組みが多く、「今あるものをどう効率化するか」という視点が中心です。
DXとはビジネスモデルの変革と新しい価値の創造
DXとは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化を根本から変革し、新しい価値を創造することです。
その視点は、社内だけではなく、顧客や社会全体に向けられています。
具体的には
- ECサイトの購買履歴データをAIで分析し、顧客一人ひとりに最適な商品を提案する
- オンライン診療システムを導入し、遠隔地からでも専門医の診察を受けられるようにする
- サブスクリプションモデルに事業を転換し、継続的な収益を生み出す
DXの目的は、単なる効率化を超え、企業の競争力を高め、市場での優位性を確立することにあります。IT化が業務の「改善」であるのに対し、DXはビジネスの「変革」なのです。
IT化はDXを実現するための重要なステップ
DXを進めるためには、まずはIT化による業務効率化が不可欠です。紙の書類を電子化し(IT化)、そのデータを分析して新しいサービスを開発する(DX)といったように、IT化はDXの基盤となります。
IT化が完了したからといってDXが達成されたわけではありません。
DXは、デジタル技術をどのように活用して、顧客に新しい体験を提供し、企業の未来を創っていくかという、より戦略的な視点から考える必要があります。